4 X’mas story
あるとき、ティナがいつものようにアイナとケーキウィンドウショッピングを楽しんでいた。

ほんのちょっぴり怠け者のレジ係は、お客は彼女らだけだったし、窓越しにアイナに変な顔を見せたりしてあやすのにも飽きたのか、どうせケーキを買わないことを知っていたので、あくびをしながら休憩室に入っていった。

僕は奥の調理室から出ていくと、思い切って彼女に聞いてみた。

「ねぇ、ティナ、今度君の家に食事を作りにいってあげようと思うんだけど、どうかな」

ティナは少し戸惑った様子で答えた。

「えっと、あなたが家にきてくれたらアイナもきっと喜ぶし、気持ちは嬉しいんだけど、でも…」

「いや、僕も、ほら、新しい料理の研究がしたかったから。いいんだ、変な気分にさせてすまなかったね」

一年。

まだ一年というのか。

もう一年というのか。

でも、ティナもアイナも僕に好意を抱いてくれていることは、なんとなくわかっていた。

「ティナ、これはその、新しいレシピをつくるときの話なんだけどさ、たとえばケーキにしよう。ケーキの上のイチゴがなくなれば桃がケーキの上にのる。もしかしたらメロンかもしれない。そのケーキがおいしければ、イチゴはケーキの上にのるだけじゃなくクレープになれるし、桃やメロンは自分もケーキの上にのれることを喜ぶかもしれない。でも一度、イチゴがケーキから離れないと、それはわからない」
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