4 X’mas story
幼少の頃から貧しい暮らしをしてきた私は、豊かさと自由を求めていた。

そして世界中にそのおとぎ話のような伝説を聞きつけ、旅を始め山に向かうものが数多くいるということも耳にし、なぜか安心感が生まれ、いつかその土地へ向かう、と女の子ながらに思ったものだった。

私は自慢ではないが、男どもに言い寄られる美貌を持ち合わせていたので、夜の妖しい街ですれ違う男に声をかけ、自分の体を売りさばき、それで得た金によって舟に乗ったり、馬車に乗ったりと旅を続けてきた。

故郷を出て一年。

長かった。

でもこれで旅が終わったわけではなく、むしろやっとスタート地点に立った、ということだ。

私の目の前にいる二人の男の名はトーマスとクリスといった。

彼らの話によると、この都市伝説に身を委ねようとしたものは今までにも数多くいたらしかった。

しかし、そのほとんどがつるはしとスコップを手に、三輪車を押して土を掘り運ぶという重労働に、いやその作業がいったいどれだけ続ければ終わるのか、そして果たして本当に「終わり」があるのか、という疑念に負け、この山を去っていったようだ。

彼らはこの地にきておよそ五年になるという。

五年前からこの山に訪れては去っていく人々を何人も見てきたようだった。
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