4 X’mas story
「ちょっと待ってくれ。頼みがある。
オレはこの金を金に換えて故郷へ持って帰らなければならない。
しかし事情があって、こっちにきたときのように一年もかけて旅をするわけにはいかないし、一刻も早く戻りたい。
隣国に出るまで時間がもったいないんだ。だから、この国で船を盗んで海を出てくれないか」


私たちは一度にすべてを理解できずに顔を見合わせたが、ノエルの鬼気迫るような勢いだけはビシビシと伝わってきた。

「落ち着け、まずは整理しよう。ノエルの故郷へ一刻も早く帰らなければならない事情ってなんだ?」

ノエルは額をゆっくりあげると、鋭さと柔らかさを兼ね備えた眼差しで私たちを見つめた。

「妻が病にかかっている。その病を治すために薬が必要で、その薬を買うためには目玉が飛び出るくらいの金がいる。オレはそのため故郷から旅へ出た」
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