4 X’mas story
そして次の日、世間がもうすぐクリスマスだと賑わっているときだ。

「一度舟を出したら数十日、下手したら数カ月は海の上だし、万が一遭難した場合のことを考えると大量の塩が必要らしい。食物の保存や、栄養補給のためだ。それをどうにかして手に入れなければ」

そもそもの食料が数十日分あるのかという不安も私にはあった。

しかし、塩などという上流家庭しかもっていないような高価なものを今さらどうやって手に入れるというのか、と考えている矢先。

「上流家庭にしかないんだろう。そしたら上流家庭に盗みに入るしかないな」

さらりとノエルは言ってのけた。

昼間の賑わいも大人しくなった頃、私たちは山のふもとの街の家に忍び込み、台所から塩を盗み出していた。

貴重な金品がある寝室などと違い、台所は居住人不在なので比較的忍び込みやすい感じがした。

しかし何軒かの家に入っても、塩は僅かばかりか、むしろ見つからない、持ってない家の方が多かった。

そのうち私たちが家に忍び込んでいることに気がつき始め、街が騒々しくなってきた。

「まずい、これじゃ手に入らないままだよ」

クリスは少し考え込んだ様子で、

「しまった、どうして気が付かなかったんだろう。塩なんてもんは家を探すよりレストランを探した方が早いじゃないか」
< 39 / 65 >

この作品をシェア

pagetop