4 X’mas story
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別に悲劇の主人公になりたかったわけじゃない。

けれど僕の運命はそうなっているとしか思えない。

僕が生まれる前に、母は重病にかかり、父はそれを治すための金を探しに旅に出た。

僕が母のおなかの中にいたということは知らず。

それから母はひとりで僕を生んだ。

僕をおなかの中で守りながら、母はずっと「いつかきっと帰ってきてくれる」と父を信じていたらしい。

心無い人たちの「あいつは逃げたに決まってる」「隣国であいつによく似た男が若い女と遊んでいるという話を聞いた」などという戯言にも、母は負けなかった。

けれど、病気には勝てなかった。

そんな話を、僕の叔父替りのメィシァ医師から聞かされた。



そしていま、母と同じ病気に、まさかマリカが。

原因不明のその病を僕は心底憎んだ。

でも、僕はメィシァから話を聞いて決心した。

15とはいえ、父のように、最愛の人のために薬を求め旅に出ることくらいできる。

マリカには黙っていこう。

彼女に言えば引き留めるに決まっている。
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