4 X’mas story
「オレはさりげなく聞いたんだ。男はいるのかって。こんな露骨じゃないけどな。答えはイエスだった。”またか”と思ったよ」

「なぁ、君の色恋沙汰の話もいいが、それと薬と……」

「まぁ、じいさん、落ち着いて、ここからだから。
そのルチアの男ってのが例の原因不明の病気にかかって、命を落としそうだったんだ。
ルチアはその病気の治療法を研究したかった。
しかし、当時まだあの街は過渡期だった。
資金と技術と人手のバランスが絶妙に悪い時期だったんだ。
彼女はその街の人々の治療に追われ、新しい病気や薬の研究に費やす時間が圧倒的に足りないと嘆いていた。
周囲からの期待にも潰されそうで、ここが癒しの場になっていたとも、正直に言ってくれた」

男は、ひとつ深い息をついた。
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