4 X’mas story
「君が彼女にその言葉をかけていなければ、薬はできていなかったと?」

「そういうこと。でもまぁ、ルチアはユルネクのところに戻るし、”またか”って感じだったよ」

あからさまに”またか”とはどういうことかを聞かせたいようだった。

彼はまたグラスの底を天井に向けるようにして酒を飲み、次を注文した。

「お客様、お水もお持ちしましょうか」

「いや、だいじょうぶ」

かなり酔いは回っているようにも見えたが、彼は話を続けた。

「いや、オレがそもそもその国にいた理由も、ある女を追いかけてきたんだ。
あれは絶世の美女だった。雷が落ちたようだったよ。一目惚れって本当にあるものだと思ったね。
その女はもともと、オレが生まれ育った街にいた荒くれの一味だった。その荒くれがとうとう海に出たっていうもんだから、風のような噂を頼りに、その国まで追いかけたわけよ。
でもさ、やっぱり彼女にも男がいたんだ。
そのときもまぁ、外国に飛び出すくらいだからな、夢中だったんだろうな。今でも思い出すと、美人だなと思うよ、アンタにも見せたいほどだ」
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