4 X’mas story
「これは願いが叶う、そう、クリスマスツリーの種です。
この種を育てて立派な木になったら、そのクリスマスツリーに願いを唱えれば叶います。
あなたならきっとこの種を育てられる。
どうですか、どうしても叶えたい願いはありませんか?」

このとき彼女の頭の中に、ユルネクのことが駆け巡ったことはほぼ間違いなかったろう。

「まさかクリスマスツリーの種をいただけるなんて。私にも叶えたい願いはあります。是非譲っていただけませんか」

「えぇ、いいですとも。ただ、私もこれから旅を続けなければならないのです。そのためにはいささかお金が必要なのです。ご理解いただけますよね」

そのあとにその男が告げた金額は、それはまさにルチアの全財産とも言えそうな額だった。


遠くからその様子を見ていた私は、「やめろ、騙されてるぞ」と言いかけた。


けれど、一瞬の躊躇の隙を縫って彼女は縦に首を振った。
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