あの丘に…
2時間ほど歩いた頃、私は眠たくて、つい大きな欠伸をしてしまった。

(やだ…恥ずかしいっ!!)
私はかなり赤面した…。
一国の姫として、人の前で欠伸など恥じるべき行為だったから…。

「休みますか?」

「…欠伸なんてしてないもの!!!!!!」

「リルの欠伸、可愛かったですよ。」

彼はそう言って微笑んだ。

「もうっ!!!バカ!!!」

私は恥ずかしさでどうしようもなくて、彼にそう言ってしまった。そう言ってしまった事にも、少し後悔して走った。

「あ…!!!!!リル!!!!」

「来ないでよ!!!」

でも、彼は走って付いてきた。城の中でしか過ごした事の無い私なんかすぐに追いつかれてしまった。

「欠伸なんか…」

「もう良いですよリル。」

「だって…姫が人前で欠伸だなんて…」

「自分が姫だって事、忘れてしまえば良いんですよ。もう城は遠い。姫はもう姫じゃない。リルですよね?」

彼はまたあの優しい笑顔で微笑んでくれた。

「うん…良いのかな?」

「ええ…あなたはリルです。私の友達の…。」

彼はまた微笑んだ。
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