ナイフ
女は静かに口を開いた。


計画とは、駆け落ちのことだった。



女が昔、胡散臭い商人から買った「二人を繋ぐ」と言われたナイフを持って言った。




“このナイフの刃に互いの印を刻むのです。

三年後の今日、この木の下で逢いましょう。
三年間で、親の目を欺くのです。



このナイフを肌身離さないで。

そして互いのために全てを捨てたわたしを、どうか忘れないで。”



二人はナイフの刃に印を刻み、持ち帰った。



その胸にただひとつ、三年後に訪れるであろう幸せを願いながら。




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