ナイフ
怪しく思った女の親が探しに来た。




“お前という子は、やっぱりあの男と別れていなかったんだね。
そんなことだろうと思ったよ。

あの男はもう来ない。新しい女と仲良くやっているに決まっている。”




“そんなことはありません。

あの人はわたしとの幸せの為ならば、誰に憎まれようが構わないと仰った。

あの人は必ず来ます。”




女の強い目に、親は呆れた。


“あいつはただの泥棒だ。お前のような貴族が愛していいほど価値のある男じゃない。

いい加減にわかっておくれ。”


“あの人は確かに泥棒ですが、価値のない人なんかではありません。

わたしたちは永久の愛を誓い合った身です。”


“なにが永久の愛だ。こうしてる間にも男は一向に現れないじゃないか。


目を覚ませ。

あんな男のせいでお前の人生を棒に振るわせたくないんだ。”





頭の中で、なにかが壊れる音がした。



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