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AM 9:57 注文の多いモーニングコーヒー
重たい瞼を持ち上げたら、白い背中がぼんやりした視界に映った。
細く華奢な背中だ。
肩甲骨と背骨が、薄い影を作る程度に浮き出ている背中。
お互い右を下にして眠るのが好きだから、こちらが先に目覚めると、この背中が一日の始まりになることも多い。
いや、多いというより、もはや日課だ。
この綺麗な背中の持ち主は、たいてい後に起きるのだから。
鼻先まで被っていた布団を僅かに下げ、少しだけ顔を出す。
絵の具の匂いが鼻を突いた。
今まで布団の中で温まっていた頬が、暖房の入っていない、部屋の寒さに凍える。
12月。我が日本国は真冬だった。
「……寒くねえの」
寝起きの声で、白い背中に尋ねてみせる。
当然、反応など返ってこない。
規則正しい寝息がそれを伝えていた。
布団の中から左手を引き摺り出し、影を作る背骨に触れる。
目覚めたばかりの体温は高い。
その体温を奪うほど、目の前の背中は冷えていた。
背中に触れた中指の先だけ、異常に冷たくなってしまった。