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知ってる。幼稚園の頃から、とっくにサンタさん信じてなかったヤツだもんね。

けどお前、ノストラダムスは信じてただろ。


1999年、世界滅亡予言の日。

お前が一日中、離れてくんなかったの覚えてる。
ずっと俺の服の裾、握っててさ。

そういえば、震えるその手、俺は握ったんだっけ、どうだっけ。



もう忘れたなと、思い出すのを諦め、結局チャンネルも変えないまま、リモコンをテーブルに置いてソファに座り直した。



「……ユヅル」


背もたれに落ち着いた少し後、不意に右隣りから名前を呼ばれた。


「……ん?」
「あのさ」
「うん」
「食べたい」
「なにを」
「ケーキ」

あ。

「いちごのヤツ」
「甘いヤツね」
「生クリームの」
「サンタさん乗ったの」
「トナカイがいい」
「乗ってるでしょ」
「食べたい」


わがままな子供みたいだ。“食べたい”って2回も言った。




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