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「でも食べたいんでしょ」
「食べたい」
3回目。
「買いに行かなきゃ食べらんねえよ」
「んー……」
「別にいいならいいけどね」
「ヤダ。食べたい」
4回目。
「じゃあ行くしかないね」
「ユヅル買ってきてー」
「俺食べないし」
「なんでそんな嫌いなの」
「さあね」
わざとらしく肩を竦めてみせて、空のカップをキッチンへと持っていく。
さすがに5回目の“食べたい”は聞かなかったけど、俺がコーヒーメイカーと自分のカップを洗っている途中、役目を果たしたマグカップを持ってきたメグルは「行く」と眠そうな無表情で申してきた。
「絵の具切れてるし」と取ってつけたように呟いていたから、思わずちょっと笑ってしまった。
別に何も言わねえよ。そんなあからさまな言い訳しなくてもさ。
わかってるって。
お前が実は心の中で、4回を遥かに上回るほど、“食べたい”を言ってたことくらい。