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それに素早く反応して歩き始める人、少し遅れて行く人。
俺とメグルは、その少し遅れて行く人の更に後ろを、やっと歩き始めるくらい。
横断歩道を渡り切る頃には、すでに信号は点滅を始め、次いで赤へと変わった。
クラクションを鳴らされなかっただけ、いつもよりマシなのかもしれない。
もしこの世に“時間”なんていう鎖がなければ、人はみんな、もっとゆっくり、のんびり楽しく、生きて行けたに違いないのにさ。なんてね。
まあ、いつの間にか隣に並んでいたメグルという生き物にとっては、“時間”なんて鎖、あるようでないようなものなんだろうけど。
横断歩道をギリギリ、なんて言うには申し訳ないほどに遅れて渡ってきたにも関わらず、隣で欠伸なんかしてるし。
マイペースでなによりだよ。人のこと言えないけどね。
横断歩道を渡ってからしばらく歩き、角を曲がって行き慣れた画才屋を目指す。
賑やかな街中とは少し離れた場所に、その画材屋は在った。
「こんにちはー」
手動のガラス戸を開けて、そう広くはない店内に、メグルは挨拶をした。