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せっかく寒い中外に出てきたのだ。どうせなら買って帰っておきたいし。


あ、そういえば、ギターの弦。
ストック切れてた気がするけど、どうだっけ。

まあいいや。一応買って帰ろう。



「そら見ろ、メグル。白い絵の具だ」


画材倉庫の方から、店主の得意気な声が飛んでくる。

その声に、画用紙を見ていたメグルが顔を上げ、画材倉庫から段ボールを抱えて戻ってきた店主へと顔を向けた。

こちらからは後姿しか見えないけど、メグルが呆れたような様子だということは一目で把握できた。

どうせ表情は、眠そうな無表情なんだろうけどね。



「……おいちゃん」
「なんだ」
「そんなにいらない」
「遠慮すんな、たんと持ってけ」
「え、くれるの」
「阿呆。買え」
「ケチ」
「こちとら商売してんだ」
「2つ分のお金しか持ってない」
「まあそんなこったろうとは思ったけどな」


ほらよ、と。白髭の店主は段ボールから2つ、白い絵の具を取り出してメグルへと渡す。

メグルはそれを受け取り、コートのポケットに直接入れておいたらしいお金を、店主の空いた右手に乗せた。




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