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「相変わらずきっかりな小銭だなあ」
「おつりめんどくさい」
「そうかい。毎度あり」
「んー」
空っぽになったのだろうポケットに、今度は絵の具を2つ入れ、メグルは店主に背を向ける。
それを見届けてから、俺は手動のドアに手をかけた。
押し開けて外に出ると、北風が待ち構えていたように体温を奪って行く。
自然と強張る肩を震わせながら白い息を吐いていると、店の中から「メリークリスマス」という、店主の低くしわがれた声が聞こえた。
「おいちゃん、似合わない」
店から出てきたメグルは、ぼそりとそんなことを言いながら、店に背を向けて歩き始めた。
店主は今日、どんなクリスマスを過ごすのだろうか。
なんて考えたことは、あと少しもすれば、綺麗に忘れてしまうんだろうけど。
「……メグル」
再び先を歩く形になったメグルの背に、声をかける。
メグルにしては珍しく、立ち止まって、振り返った。