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「なに」
「楽器屋寄っていい?」
「ギター?」
「うん」
「いいけど。別に」
「そりゃどーも」
立ち止まったままのメグルを追い越す形で、今度は俺が先に立つ。
メグルは楽器屋までの道を知らない。
面倒くさがって、あまりついてこないから。
たまについてきても、いつも俺の後ろを歩く。
メグルは道を覚えるのが苦手なのだ。
3歩ほど後ろを、ゆったりしたペースで、のんびりと。
それはクリスマス当日でも、変わらない。何ひとつ。
「……ケーキ遠い」
ぼそっと。
3歩後ろから、北風にかき消されるか否かほどの声で、愚痴とも取れないセリフが聞こえてきたから、俺はマフラーに隠れて小さく笑った。
振り返りはしなかったから定かではないけど、鼻先を赤くして、けれど眠そうな表情のまま呟いたのだろうメグルが安易に想像できたから、どうしても笑えてしまったのだ。