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街角にある、見慣れた小さなケーキ屋は、楽器屋からそう遠くもない。
すぐに見えてきたその店には、今日という日を申し訳程度に表した、可愛らしいリースが飾られてあった。
木製の扉を開けると、優しい鈴の音色が、広くない店内に響いて消えた。
「いらっしゃいませ」
カウンターには誰も居らず、店員を呼ぼうと思った直後、カウンターの奥から出迎えの挨拶と共に、見知った店員さんが顔を出した。
「あ、今日は2人で来たんだ」
「こんにちは」
いつも、とまでは言わないけど、メグルと2人で来ることはあまりないので、店員さんはうれしそうに笑った。
「今日クリスマスだもんね」
「ケーキまだありますか」
「うん、あるよ」
「トナカイ」
「もちろん」
短いメグルの一言にも、店員さんは笑顔で答えた。