AM 0:00




「ありがとうございました」という店員さんの声を背に受けながら店を出ると、重たく空を覆っていた灰色の雲が、微かに隙間を作っていた。

見えるか見えないか程度に覗く青い空に、日の当たらなかった道が、少しばかり明るくなっている。

10時頃に見た天気予報は、徐々に外れの予感を見せていた。


「……今日」


一歩ほど後ろから、メグルの小さな声が聞こえた。


「今日?」
「雪」
「うん」
「降らないかな」
「どうだろ」
「雪がいい」


本当、わがままな子供みたいだ。

去年は全然雪が降らなかったから、今年こそは降ってほしいのかもしれない。

けれどメグルは雪で遊ぶのが好きというわけではなく、見るのが好きということもない。

メグルは雪の白に染まる街を見るのが好きなのだ。


「……降ったらいいね」


マフラー越しにそう答えると、メグルは小さくうなずいた。




< 27 / 45 >

この作品をシェア

pagetop