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「ありがとうございました」という店員さんの声を背に受けながら店を出ると、重たく空を覆っていた灰色の雲が、微かに隙間を作っていた。
見えるか見えないか程度に覗く青い空に、日の当たらなかった道が、少しばかり明るくなっている。
10時頃に見た天気予報は、徐々に外れの予感を見せていた。
「……今日」
一歩ほど後ろから、メグルの小さな声が聞こえた。
「今日?」
「雪」
「うん」
「降らないかな」
「どうだろ」
「雪がいい」
本当、わがままな子供みたいだ。
去年は全然雪が降らなかったから、今年こそは降ってほしいのかもしれない。
けれどメグルは雪で遊ぶのが好きというわけではなく、見るのが好きということもない。
メグルは雪の白に染まる街を見るのが好きなのだ。
「……降ったらいいね」
マフラー越しにそう答えると、メグルは小さくうなずいた。