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PM 22:15 孤独な世界にとっておきの唄を
筆の持ち手の先端は、もう見る影もなくボロボロだった。
1年ほど前に買い替えた筆で、まだ新しいはずなのに、メグルの噛み癖のせいで、もう5年以上は使っているようにさえ見える。
ベッドの上に座り、床に広げた大きな画用紙を睨みつけ、筆の柄を噛むメグルの横顔。
すでに今、メグルの瞳には、画用紙いっぱいに広がる、創造の世界が映っているんだろうと思う。
一心不乱に画用紙を見つめるその横顔は、街の夜景に照らされて、ゾッとするほど綺麗だった。
普段はずっと眠そうなくせに、創作するときだけ、怖いくらいにまっすぐだよね、お前。
夜景の明かりにしか頼れない寝室。
俺は使い慣れたギターを抱えて、意味もなく1弦をはじいた。
少しだけ耳に刺さるような、高く細い音が響く。
メグルがゆっくりと顔を上げ、画用紙から俺へと視線を移した。
その瞳を見返しながら、俺は1弦を押さえて音を止める。