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「……そっか」
「うん」
「ユヅル」
「ん?」
「歌ってよ」

あ。

「とっておきの」
「クリスマスソング?」
「うん」

“聴きたい”


そう言った、メグルの声は穏やかだった。

返事の代わりにはじいた弦も、撫でるような音色だった。


創造の世界はとても孤独だ。

メグルが絵を描いている時も、俺が作曲している時も。

お互いに理解できないし、きっと永遠にわからない。

だけどメグルは静かに言うのだ。


“ユヅルの唄がね、好き、いちばん”


その歌声がなかったら、絵、描けない、ってさ。言うの、メグルが。

唯一、メグルの世界に寄り添えるもの。それが俺の唄なんだって。


意味わかんないよね。俺もわかんないけど。

だけどね、メグル。これ言ったことないけどさ。

お前の世界も、俺の楽譜になってるからね。


知らないだろ、教えてないし。
言わないよ。気づくまで。




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