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「……今頃」


最後に残ったトナカイを眺めながら、メグルは小さな声で言う。


「みんな、どんなクリスマス過ごしてるんだろうね」


弦をはじく。間奏を追加した。


「……さあね」


それだけ答えて、続きの唄を口ずさむ。

メグルはもう何も言わず、ポケットから白い絵の具を取り出して、パレットに落とした。

真っ白に染まった筆先は、画用紙の上で盛大に舞った。

独特の世界観で彩られたそこに、綺麗な雪が舞い落ちる。


12月25日。

例えば今日が、世界の終末だったとしても。

絵の具の匂いと、ギターの音と、コーヒーの香りばかりの部屋で。

きっと変わらず、こんな一日、過ごしてんだろうね。俺とお前はさ。

あ、でもたぶん、手だけは握っているかもしれない。


なんて。そんな夢物語。



時刻は真夜中の0時を指す手前。
日付は今日もゆっくりと、当然のように移り変わる。

雪のような白い絵の具と、とっておきのクリスマスソングは、もうじき終わりを迎える頃だ。





【End】




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