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「……コーヒー、冷めても文句言うなよ」
「えー、ヤダ。言う」
「じゃあ起きろ」
掛布団のミノムシをばふっと叩く。
少しだけ見えている頭が、ダルそうにうなずいた。
それを見届けてから寝室を出る。
ベッドアウトの寝室はただの冷凍庫だ。
暖房で温められたリビングへ戻り、コーヒーメイカーから出来立てをカップに注ぐ。
アイツはいつも2人分飲まないと気が済まないヤツだから、メグルの分はマグカップだ。
毎日必ず2杯分、家に居れば常にコーヒーを飲みたがるメグルのせいで、うちのコーヒーメイカーは大忙しだ。
あとお前、たまには財布の心配もしろよね。
コーヒー豆、結構高いから。
黒みがかったガラスのテーブルに、マグカップを置く。
自分の分のカップは手に持ったまま、ソファに腰掛け息をつく。
カップに口をつける。酸味の少ない苦みが口の中に広がり、それから喉を通っていく。
コーヒーの通り道だけ熱くなり、胃に落ちるのもわかる気がした。
それと同時に、背後でドアの開く音。
「おはよう」と、特に振り返ることもせずに言う。
「……はよ」と、いまだ眠たそうな声が返ってきた。