翼を失くした天使の羽音
壊れかけていた、わたしの心が、また元気を取り戻していく。


トクン、トクン――って。



不思議。

どうして、こんなに素直に涙が流れたんだろ――。



「天人くん……ありがと」

感謝の気持ちを伝えながら気づいたよ。



不思議なんかじゃないって。


きっと、それは――。



わたしの作り笑顔を見抜いて、電話をしてくれた。

白雪姫の王子様になってくれた。



天人くんの優しさのおかげだね。




「ありがとう……」



天人くんも、辛い恋をしているのに。


心配してくれて、ありがとう。

わざわざ電話をしてくれて、ありがとう。

涙を流す場所を作ってくれて、ありがとう。



本当に……本当に。
大好きだったよ――。


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