翼を失くした天使の羽音
「何が……あったの?」

わたしのこの質問には答えず、ただ黙って、彩人くんが近づいてきた。


「えっ」

そして、いきなり、わたしの肩を抱き寄せた。



な……何が起きたの――!?

頭の中は大パニック状態。



「このまま……聞いて……」


耳元に響いた、弱々しい声。

わたしは静かに、コクンとうなずいた。



ドキン――ドキン。

戸惑いながらも、2つの鼓動が重なり合う。


時間が止まったかと思った――けど。

すぐに時計の針は動き出した。




「……の……が――た……俺――――…」



「え?」

耳元で聞こえた、彩人くんの言葉に、わたしは愕然とした。



「ホントに?」

コクン、うなずく彩人くん。



そんなっ……。



それじゃあ、わたしは……。


わたしのっ……気持ちは――――!


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