翼を失くした天使の羽音
「ゆんちぃには、ちゃんと言っておこうと思……」


言葉が途切れたのは、きっと。


彩人くんの制服の上に、ポタリと落ちた一粒の涙のせい。



「泣いてるの?」


「……ううん」


わたしは体を離して背を向けた。



「……それで?」


涙のあとを指で拭って、そのまま後ろ向きに聞いた。



「明日、学校休んで会いに行く」

「……え……」



ズキズキ、痛む胸を左手で押さえて、


「そっか。良かったね」


彩人くんの顔を見ないまま、そう伝えた。



そして――。


「この本、今日までに返さなきゃいけないから、行くねっ。教えてくれて、ありがとう」


わたしは逃げるように、図書室に駆け込んだ。




――『サラの記憶が戻った。俺に会いたいって……連絡がきた』


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