翼を失くした天使の羽音
「あたし前から不思議だったんだけどー、彩人って何で女子を名前で呼ばないんだろ?」


「あー、それっ、わたしも気になってた。名前で呼ばれてる女子って1人もいないよね」



再び聞こえてきた、里沙ちゃんと友香ちゃんの会話。




言われてみれば、確かにそうだ。

彩人くんは、女子を「ニックネーム」でしか呼ばない。



みほっち、かおりん、あっちゃん、けーちょん、かんちゃん……。


そして、奏子ちゃんの事も、かなっぺ。


わたしの事も……ゆんちぃって呼ぶ。




彩人くんに、名前で呼ばれる特別な女のコは1人もいない?



――いるよ…――


たった1人だけ――…


名前を呼び捨てで、呼ばれている女のコ。




サラさん――…



ズキ……。
胸が痛い。


もう、ホントに切ないなぁ……。


こんなに苦しいのに、どうして彩人くんを好きなんだろう……。



きっと...


初恋が実らず――…
失恋したばかりで、油断してたんだ。


その初恋の相手と、全く同じ顔で「好き」だと言われて。

手をつないでデートして……。


気がつけば、わたしの心は動いてた。


報われない恋だとも知らずに――…


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