翼を失くした天使の羽音
「優音、コレ見て」


「何?」


奏子ちゃんが差し出したのは、小さなスケッチブック。



「中、見れば分かるから」



言われるがままに、パラパラ。

ページをめくっていくと。



「…………えっ?」



数ある風景画の中、ある1枚の絵に目が留まった。




教室――窓際の席、机の上に頬杖ついて、外を眺めている女のコの横顔。




でも、これって――――。


「わたし…………?」




「そう。その絵のモデルは優音」


奏子ちゃんが、ハッキリと言った。



「え――」

わたしが、顔を上げると。




「それ描いたの、天人くんだよ」



信じられない言葉を聞かされて、戸惑った。


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