翼を失くした天使の羽音
駅前の交差点。
赤信号で立ち止まる。



「神崎さん…………あのさ」


天人くんが何かを言いかけた。



「何?」



わたしは天人くんの顔を見る。



え?

顔が……赤いよ?




「僕さ……本当は神崎さんの事……」





プァ――――――――ッ!




そのとき。

大型トラックのクラクションが鳴り響いて。



天人くんの言葉を掻き消した。




「ごめん……聞こえなかった……」




何を言ったんだろう?

もう1度、聞こうとしたんだけど。




「何でもないよ。気にしないで」


天人くんはそう言って、寂しそうに微笑んだ。



「でも…………」



それを伝えるために、一緒に帰ろうって誘ったんじゃ……。




「あ、信号青になったよ。渡ろう」


< 132 / 190 >

この作品をシェア

pagetop