翼を失くした天使の羽音
「え――…と」


わたしは、持っていた鞄のファスナーを開けて。


ゴソゴソ。

手探りで、スケッチブックを取り出すと、天人くんの前に差し出した。




「ごめんね……中、見ちゃった」



わたしが謝ると。

天人くん、顔が真っ赤になったまま、固まった。



「天人くん……?」


眼鏡の奥の瞳と視線がぶつかって。



ドキン――。

わたしまで、身動きが取れなくなった。




「これ……緒川さんが?」


スケッチブックを受け取りながら、天人くんが聞いた。



「……うん」



寂しそうに、スケッチブックの表紙を見つめている、天人くん。




少しの沈黙の後。



「困ったな……」


小さくつぶやいた。




「この気持ちは、ずっと隠し通すつもりだったのに……ずっと言わないつもりだったのに……」




天人くんが、言葉を選ぶように、ゆっくりと話し始めた。


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