翼を失くした天使の羽音
いったい、誰の――――

おそるおそる、彩人くんに聞くと。



「見ればわかるよ」


照れくさそうに、彩人くんは答えた。




どくん、どくん。



「――えっ?」


目を疑った。




だって。



写っていたのは――――


「――わたし?」


だったから。




「よく撮れてるでしょ?」


銀杏の木の下。
寂しそうに本を読んでる、わたしの写真。



「どうして?」


「自分でも分からない。気づいたら、ケータイで撮ってた」



彩人くんが、わたしの鼻をつまんだ。


照れ隠し――。



「……うれしい……」


わたしはまた感動して泣きそうになった。



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