翼を失くした天使の羽音
放課後の教室。

困った事に2人きり。


窓の外では、サッカー部と野球部の部員たちが一生懸命練習してる。


たまに聞こえてくる吹奏楽部の楽器の音色。

何だか心地いい。


あ。

サックスの音が聞こえる。
きっと奏子ちゃんだね。

中学の頃から吹奏楽部で、サックス歴は4年なんだって。

この前の体育祭で聞いたけど、かなり上手なんだっ。


その音色と夕日に包まれながら、わたしは天人くんの絵を覗き込んだ。



「うっわあ☆ 天人くんの絵すごい!」


わたし、思わず絶叫しちゃう。


だって、本当に上手……っていうか、本格的。

びっくり……。



「そうかな?」

「うんっ。センスあるよ」

「ホントに?」

「バッチリ」


わたしが即答すると。



天人くんが照れくさそうに頭をかいて、



「実は、僕。将来は美大に進みたいって思ってるんだ」


って言ったんだ。




思いがけない収穫。
美大に進学……。

天人くんの、夢。
こんな事聞けるなんてラッキー。


何か、もう……。
フラれた事なんて、どうでもいいや。



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