翼を失くした天使の羽音
「え……ちょっ……待って!!」


彩人くんの声が背中に聞こえた。



わたしは構わず歩き続ける。



ホント、バカみたいっ。

何を期待してたんだろう……。



結局、天人くんはわたしの事なんて、何とも思ってないのに……。


フラれたあの日から、何も変わっていないのに……。




バカなわたし……。



「ごめんっ、待って!!」


追いかけてきた彩人くんに、腕を掴まれた。



「放してっ……」

その腕を振りほどく。




「……ホントに、ごめん」


とても穏やかな声で謝る彩人くんの姿が目に入る。



「ごめん……ごめん」


何度も、何度も繰り返すその言葉が、スッと心に溶けていって――。



そして、怒りまでも溶かしていった――。



「俺の自己満足な行動で……傷つけて……ごめん」


彩人くん、何度も謝るから、逆に申し訳ない気持ちになってくる。




だから……。



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