翼を失くした天使の羽音

もしも、あの日――。


2学期最初の昼休み。



図書室の裏にある、大きな銀杏の木の下で――…



――『ねぇ、うちも一緒に、お弁当食べてもいい?』――



奏子ちゃんが声をかけてくれなかったら……。



わたしは今も、学校が怖いままだったと思う。



今のわたしのように――…




じわっ。


目の前の視界がにじんだ。




ヒトリニシナイデ。

ヒトリハコワイヨ。



あの頃と同じ感情が溢れ出す――。




彩人くん……!



どこに行っちゃったの?




「君、もしかして『ゆんちぃ』ちゃん?」


ふいに、声をかけられた。




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