翼を失くした天使の羽音
「ごめん……ゆんちぃ」


さっきとは正反対の、弱々しい瞳で彩人くんが振り返った。



――ううん。


わたしは首を横に振る。



「怖い思いをさせて……泣かせて……」


――ううん。


もう1度、首を横に振る。




「よかった……ホント焦った。ゆんちぃ、急にいなくなるんだもん……無事でよかった」


彩人くんが向ける優しい瞳。



張り裂けそうだった、わたしの心は、ホッとして、安堵の涙が出た。



彩人くんが、よしよしって、わたしの頭と心を撫でてくれた。



だから、恐怖なんてどこかへ飛んでって、
心から安心できたんだ。




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