翼を失くした天使の羽音
午前中は、どんどん人が集まり大反響。

休む暇なんて、まるでなかった。


だけど。

午後になると、体育館で『個人ステージ(自由参加のライブ)』が始まって。


生徒のほとんどが、体育館へ移動した。

だから、お昼を過ぎた頃から、ウチのクラスもだいぶ落ち着いてきた。



「神崎さん。休憩入っていいよ」


呼び込みから帰ってきた天人くんが、そう言った。


「え?」

「来る人の数も減ったし」


「……でもっ」

わたしが躊躇していると。


天人くん、ニッコリ微笑んで。


わたしの耳元に顔を近づけて、


「図書室の裏に行ってみるといいよ。彩人が待ってる」


って囁いたんだ。



「えっ!」

わたし、ボー然。


天人くん、それだけ言うと。
くるりと背中を向けて、


教室の隅に小さく作られた、更衣室の中に入っていった。


天人くん……ありがとう。
わたしは、教室を飛び出した。




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