翼を失くした天使の羽音
教室に戻ると、王子様のいない白雪姫が笑ってて。


それは、たった今、恋を失ったわたしには耐えられない光景だった。



予算オーバーしてでも作るべきだった……王子様の衣装。

そんなの、今さら遅いけどね。



「優音っ」


名前を呼ばれて笑顔で振り向く。



「奏子ちゃんっ、え……?」


言葉に詰まった。


だって、微笑む奏子ちゃんの隣。


制服のブレサーを脱いで、白いカッターシャツに黒いズボン……頭には王冠をつけた初恋の人。



まるで王子様のような、天人くんの姿が目に入ったから。



「うちが用意した王子様。って言っても、合服姿に王冠を被ってもらっただけ。すごいよね、それだけなのに、ちゃんと王子に見えるんだから」


奏子ちゃんが得意げに話す。




ホントだね……。


「すごいね。カッコイイ」


泣きたいのを我慢して笑った。




白雪姫に、王子様が現れた。
それだけで、幸せな気分になれたんだ。


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