暗闇の廃校舎【短編】
噂の幽霊……人によって白装束の女だったり、矢が頭に刺さった兵隊だったり、少女だったり――
やたらバリエーションに富んでいた。
何でも……ネット仲間の情報によると、複数見たと言う証言が多く、霊感ゼロの俺にも何かしら見えるだろうという事だった。
チャットで「取り憑かれないように、気をつけろよ」とか、言われていたけど……
どうなんだろう、さっきのは……取り憑かれかけていたのか?
自称、霊感があるという知人に「お前は鈍感過ぎて、取り憑かれていても気付かねーよ」と言われた事がある。
何にしても……あの人形、探してみよう。
立ち上がり、ズボンのホコリを叩いて落とす。
真っ暗で何も見えないが、壁伝いになんとか移動し、廊下に出る。
どこだ……?
光りが絶たれた今、ほとんどカンで人形を探すしかない。
こんな状況になっても、恐怖よりも好奇心が勝ってしまう。
心臓がドクドクと激しく動き、恐怖とは別の高揚感が体を支配している……。
頭の中、マヨちゃんの泣き声が、残響のように小さく響く。
好奇心と……あの子と友達を探すと約束をした。
それだけで、人形を探す理由は十分だ。