暗闇の廃校舎【短編】
奥に何か――ある。
ドクドクと心臓が激しく鼓動し始める。
濡れた指先に当たる、柔らかい感触――
恐怖よりも、何かに導かれるような衝動に駈られ、“ソレ”を掴んで割れ目から引き出すと――
――ヒタ……
足音……真後ろで止まった。
「マヨちゃん……見つけたよ」
後ろを振り向いて、血まみれの“ソレ”を彼女に差し出す。
『ア……あぁアァ……チが……』
マヨちゃんは“もや”ではなく、はっきり人間の姿をしていた。
その表情は絶望と恐怖で歪んでいる。
まあ……“お友達”が血まみれで、しかも頭まで取れかかっていたら無理も無いだろう。
その血は、あの映像で見た小さな布人形の首から出ていた。
だらんと、頭が不自然な方向に垂れ下がり、細い糸で辛うじて頭と胴体が繋ぎ止められている。
生暖かい……胴体と血液。
手のひらには微かに、トクン……トクン……と、“人形”の鼓動を感じる――
まるで、生きているかのようだ……