暗闇の廃校舎【短編】
割れた硝子窓から月明かりがスーっと差し込む。
月を隠していた雲が流れたようだ。
廃校舎、その廊下を青白く照らす光り――
その光りに照らされ、人(多分幽霊)のシルエットがぼんやりと浮かび上がる。
震える手でペンライトを廊下の先へ向ける。
――ひっ……
か細い少女の悲鳴。
ライトがシルエットに当たり、人(多分幽霊)は脅えたように体を震わせる。
背丈は小さく子供、声からして女の子……
想像していたより、人間っぽくて怖くない。
……いや。本当に幽霊か?
「君……人間?」
ライトを下に向け、ゆっくり女の子(幽霊だったらいいな……)に近づくと、彼女は恐る恐るといった感じで顔を上げる。
「あ……わたし、友達、探してて……」
「……友達?」
近くまで行くと、月明かりに照らされはっきりと彼女の顔がわかる。
青白くもないし、目から血も出てないし、体が透けてもいない。
多分……小学校高学年位の女の子だろう。
――人間の。