暗闇の廃校舎【短編】
月明かりとライトに照らされた肌は血色が良く、つぶらな瞳、艶のある唇、肩まで伸びた癖の無い黒髪――
長袖の白いワンピースに黒いカーディガンを羽織っている。
どっからどう見ても、人間の女の子だ。
女の子は涙で真っ赤に腫らした目で、俺を見上げて来る。
「こんな時間に、一人で?」
確か……丑三つ時を狙ってこの廃校舎に忍び込んだ後、5分と経っていない。
おそらく、午前2時を少し過ぎた位だろう。
深夜、廃校舎に女の子が一人……不自然だ。
過疎化が進む山岳沿いの片田舎、20年前に廃校になった小学校。
取り壊されず、放置されているこの廃校舎は立入禁止になっているはずだ。
――まあ、不法侵入している俺が言う事じゃないけど。
女の子は首をゆっくり横に振り、
「友達を、探しているの」
と、さっきと同じ事を繰り返す。
「友達……はぐれたのか?」
こっくりと、うなずく女の子。
「見つからない……ずっと、探してるのに……」
うつむき、顔を両手で覆い、わっと、咳を切ったように泣き出してしまう。
……まいったな。