暗闇の廃校舎【短編】
「でも、ずっとここにいる訳には……」
マヨちゃんはグイッと、強く俺の服を引っ張り――
『お、ニイちゃンは……どうシて、ここに、キたノ?』
低く掠れた――底冷えするような、冷たい声……
「え……」
ゾワリと……肌が粟立つ。
もしや――と、うつむいたままの彼女のつむじをじっと凝視する。
だが――
「怖く、ないの……?」
「えっ!? あ、いや……」
次に聞こえて来たのは、か細くて弱々しい声……。
何だったんだ?
さっきのマヨちゃんの声……。
「うん。不思議と、普通の人よりは暗い所とか怖くないんだ」
「そう……」
そっと、服の袖を放すマヨちゃん。
「もう、大丈夫……早く探そう」
「う……うん。そうだね……」
何だ……気のせいか。
彼女におかしな様子は無い。