暗闇の廃校舎【短編】
流石はオカルトマニアの間で絶賛されている、穴場の心霊スポット。
普通に会話しているだけでも、声が心霊現象っぽく変化して聞こえる。
これが丑三つ時の廃校舎という、異空間のなせる技か……。
本物と遭遇出来たら百点満点なんだけど。
「さて、二階は一通り見終わったかな」
――ヒタ……ヒタ……
廊下にマヨちゃんの足音が響く。
今だに“本物”にはお目にかかれない。
もしや“出る”って噂はデマか?
『お、ニィちゃン、は、ヤい、ヨぉ……』
「……。ん?」
今、マヨちゃんに何か話し掛けられたみたいだけど……
ぼんやりとしていて、聞いていなかった。
立ち止まり、振り返ると、少し後ろの方からマヨちゃんが速足で歩いて来る。
「あ、ごめん……速かったね」
「……置いて行かないで。一人になるの、怖い……」
そう言って、ギュッと服の袖を掴んでくる。
「置いていかないよ。怖いなら、服掴んでていいから」
そう言うとマヨちゃんは、小さくコクンと、うなずいた。