またいつか
「幼少の記憶なんて、千春にはないのにね……。あなたには感謝しています。ここまで千春を育ててくれたこと。」
そう言って深春は頭を下げた。
それから続けた。
「こんな素敵な家族に千春は囲まれてるんですもの。私は帰るとします。……連れ戻そうなんて考えた私が、馬鹿でした。」
「何、言ってんの、深春?」
「私はここにいるべき人間ではないし、あなたもあっちに帰るべき人間ではないということ。……それだけよ。」
「待ってよ、何で、帰るの?」
「だからここにいるべき人間ではないからよ。」
「でもっ……。」
「いい?千春……。」
泣きそうな私に深春は優しく話し始めた。