オオカミ少年
私は、ゆっくりと唇に触れた。
あの感覚が生々しく残っている。

私はリボンを取られて寂しくなったシャツの胸元を握りしめた。

…どうしてキスなんかするの?

…どうしてそんな意地悪な顔して微笑むの?

何もかも分からなくなり私は顔を膝に埋めた。

何でこんなことになるの??

目から涙が滴り落ちる。

私は顔をあげて急いで頬に伝った涙を拭った。

ダメ、泣いちゃ。

そう思い泣くのを我慢した。

ソファーから立ち上がり鞄を抱え、教室から走って出て行った。

ドアも閉めずに。

私は果てしなく続く道を全力で走った。

まるで現実から目を逸らすように。
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