オオカミ少年
初めて入る体育館。予想よりも大きかった体育館に少し驚きを感じた。

新入生は指定された自分の席に座った。「これから、入学式を始めます」
体育館中に響き渡る声。
「まずは新入生代表の言葉です」
司会の人が、そう言うと私の横に座っていた女の子達が口を開いた。
「これって入試で一位だった人が代表になるらしいよ」
「へ~、凄~い」
へ~、凄いなあ。
入試で一位だった人かあ。
…私なんか、ギリギリで入れたからなあ。
そう思い教壇に目を向けた。
「それでは、竹内廉君、お願いします」「はい」
と凛と透き通った声が静かに響いた。

どんな人なんだろう…。
やっぱり、入試で一番ってくらいだからもう見た目からしてがり勉なのかな?
黒ブチ眼鏡にキノコ頭でボタンは一番上まで閉めてて…。
ないない、いくら何でもないって。
なんて、私が心の中で自分に突っ込むと教壇からカツン、カツン、と言うが聞こえた。


でも、入試で一番だった人は黒ブチ眼鏡にキノコ頭で一番上までボタンを閉めるどころか、流行りの髪形に第二までボタンを開けていて、眼鏡もかけていない。むしろ、イケメン…。

あれ?
あの人、どこかで見たことある。
そう思いゆっくりと目を凝らした。

…って、え!?
あ、あの人、朝の変態男じゃん!!

周りの女の子がキャアキャア言っているのが微かに聞こえる。

「桜の蕾が開き始め、暖かい今日、この日。僕達は高校生と言う、また新たな人生を歩み始めようとしています。『文武両道』この言葉を目標に勉学に、部活動にと活発な学年にしていきたいと思います。皆さん、今日の気持ちを忘れずに高校生活を有意義に過ごしましょう」
何て言う言葉は私の耳には入ってこなかった。

…あの変態男と同じ学校?
ありえないでしょ…。
ねえ!!私の輝かしい高校生活はどうなるの!?
と言う考えばかりで私の頭はいっぱいだ。

あんなに弾んでいた私の心が、一気に沈んでいくのが分かった。
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