オオカミ少年

13話 走れ

どれほど走ったのだろう。
この長い夢はいつになったら終わるのだろう。

沢山、走って疲れきった私は階段に座りこんだ。
肌に伝わる冷たい感覚。
肺が苦しいと叫ぶ。
…これは夢じゃない。

目から溢れた涙を拭い膝に顔を埋めると後ろから声がした。
私は急いで顔をあげ振り返ると逞が居た。
あんなに走ったのにもう追いつかれるなんて。

初めて見た逞の怖い顔。

徐々に迫ってくる逞。
私は立ち上がり後ずさりしようとしたけどここは階段。
落ちたら一たまりもない。

とうとう腕を捕まれてしまった。

「やだっ」

どんなに抵抗しても男の子の力に勝てない。

逞は私を抑えつけてシャツのボタンを外していく。

「逞っ…、ヤメテ」
その言葉を聞いた逞は見たこともない冷たい笑顔をした。

「ヤメテ?こういうことしてほしかったんじゃないの?」

そう言いながらどんどんボタンを外していく。

こんなの逞じゃない。
私の知ってる逞じゃない。

目を閉じると一粒、涙が落ちた。

「…おい」

上から私の大嫌いな人の声が聞こえた。
目を開けるとそこには竹内廉がいた。

…まさか助けに来てくれたとか?

竹内廉は逞を殴り階段に落とし、私の腕を掴んで何も言わず走り去った。

そんな竹内廉の優しさに更に涙が出た。
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