オオカミ少年
「コレ、出来たらご褒美やるよ」
と廉が私に問題用紙一枚を渡した。

私がファーストキスされた時の台詞。

「…キス?」

自然と言葉が出る。
顔を真っ赤にさせると、廉は少し笑い、
「違げーよ」
と言った。

…違うんだ。

私は廉に渡された紙に、
「遊園地」
と書いた。

「…分かった。解けたらなっ」
と優しく微笑む。

今、思えばデートじゃん。
でも廉はモテモテだからデートなんて普通なのかな…。

自分で考えて自分で傷つく。

…やめた、やめた!!
自分で考えて自分で傷つくとか馬鹿みたい!!

私は30分くらいかけて問題用紙一枚を解いた。

いつの間にか机に俯せになって寝てしまった廉。

そんな廉の肩を揺すると、ゆっくりと目を開けた。

「…出来たか?」
と言い体を持ち上げる廉の前に問題用紙を置いた。

「………」

心の中で当たってますようにとひそかに願う。

「正解」

その言葉に胸が弾む。

「…ねえ、もう一つお願いしてもいいかな?」
と、また自然に言葉が出る。

「ん?」

私は紙に「抱きしめて」と書いた。

その紙を見た廉は頭をクシャっとかいて徐々に近寄った。
そして私を優しく包んでくれた。
また甘ったるい香水の香り。
私の求めていた温もり。

…もっと欲しいよ。
なんだか私、欲張りだ。
自分が怖い。

…大嫌いだったのに。あんなに大嫌いだったのに。
だけど今は、この温もりが愛しいよ…。
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