オオカミ少年
葵は羨ましいくらいプルプルの唇を舐めて、スカートを少しひるがえし後ろを振り向いて私を見た。
「じゃあさ、舞はどんな性格の人がいいの?」
と大きい目で私を見つめる。

…どんな性格の人?私の頭の中に斎藤君の顔が浮かんだ。

「…斎藤君みたいな性格の人?」
と疑問形で答えれば、
「へえ、斎藤君かあ。何で?」
と即刻で再び返される。

何でって言われても…。

「優しいし、爽やかだし…」
「え~、葵は竹内廉君みたいなあ♪ちょっとワイルド系な男の子がタイプだなあ♪」
と声を弾ませて葵が言う。

…だからって竹内廉は無いでしょ。

竹内廉かあ…。
怖いから顔よく見てなかったけど、確かにイケメンだったかも…?
でも、無い!!
好きになるとかはありえないから!!



「ただいま~」
と言い家に入ると、すぐ奈美が走り寄ってきた。
「お姉ちゃん、おかえり~。高校どうだった??」
と愉快に聞いてくる奈美が少し憎たらしい。
…どうだったねえ。最近でしたよ、最悪。
「んー、別に普通。奈美は新しいクラスどう??」
と聞くと奈美は満面の笑みで笑った。
「仲良い子、沢山いたよ~♪それとね、それとね」
と声を弾ませ私の耳に口を当てた。
そして、小声で、
「あとね、奈美、彼氏出来た♪」
と言った。
「へー、って、え!?」
奈美の思いもしなかった言葉に思わず驚く。

今、何て言った!?
彼氏!?ねえ、彼氏って言ったの!?

…妹に先を越された。

「お姉ちゃんも早く作りなよ♪カ・レ・シ♪」
と憎たらしい微笑みと憎たらしい台詞を吐いて玄関を後にした。


彼氏かあ…。
私は部屋着に着替え、ベッドに横たわった。

付き合うキッカケって何なんだろう?
初恋を経験したことの無い私には全然分からない。
告られたから付き合うって人もいるけど自分の事を好きなら誰でもいいの?
付き合うってお互いがお互いの事を好きだから付き合うんじゃないの?
ってか付き合うって何?どういうことをするの?
一緒に学校行ったり、デートしたり、キスしたり?
それをしてどうなるの?
…分からないなあ。
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